[ 鹿児島県奄美大島北部 2015年9月 ]
奄美大島滞在中は主に島内のサワガニの分布を北(大和村、宇検村、旧住用町)と南(龍郷町、旧笠利町)の地域に分けて調べながら撮影していました。その成果の一つと言えるのが写真のサワガニです。甲幅は4センチ若でサワガニでは大型の部類です。体色は灰色、黄色、白、青白など。歩行は大型個体ほど鈍く、また深い巣穴に身を隠すこともないので、容易に撮影することができました。実はこの種、一昨年に奄美大島の北に位置するトカラ列島宝島でも確認していました。図鑑の情報によれば、同島生息のサワガニはサカモトサワガニとされていますが、実際に観察したところでは上記に述べたような生活史で全くといっていいほどに形態も生息環境もかけ離れたカニでした。そして今回奄美北部でそのサワガニを再度確認し、南部のサカモトサワガニと比較したところ、やはり生息環境や形態が異なっていることが見受けられ、個人的な意見ではありますが、本種はサカモトサワガニとは別種の可能性が高いということが分かってきました。また本種は奄美北部(旧笠利町、龍郷町)の渓流でしか確認できませんでした。そもそも奄美北部の地質はその他の地域と地質が異なっているようで、このように宝島との共通のサワガニが生息しているということは、太古に奄美市名瀬あたりを境に独立した陸地で、宝島、喜界島と陸続きだったのではないかと思えてなりません。
成熟した雄ガニの鋏の可動指は外側へ大きく湾曲し、老齢個体ほど湾曲が強まる。甲羅の表面は平滑でサカモトサワガニには見られる額の段差、点刻は見られない
子ガニを抱える雌 奄美大島北部 2015年9月
鹿児島県十島村宝島産 2013年8月