オキナワミナミサワガニ
2012年 09月 04日
沖縄県国頭村 2012年9月
オキナワミナミサワガニ(Candidiopotamon okinawense )はヤンバル(=沖縄島北部)で最も個体数の多いサワガニといえるでしょう。たぶん内地の知人に本種を見たいからガイドしてほしいと言われれば、シーズンならば間違いなく一晩に少なくとも10個体、しかも大型の個体を簡単にお見せすることができると思います。
本種はサワガニ科ではなく、ミナミサワガニ科という科に属します。(サワガニ科に含まれることもある)
容姿からしても全体的に丸くてコロンとしたサワガニの印象とは大きく異なり、鋭く尖った印象を持った種類です。生息環境は渓流環境で、成体は両側に崖の迫った細い流れ、滝の流れ落ちる場所の岩肌に開いた穴や転石の下に潜んでいます。幼体は水中での生活に依存するようで、幅の広い渓流の転石下からよく見つかります。大きさは沖縄島生息のサワガニ5種のうち2番目に大きい種ですが、本来成熟した雄のカニの象徴である片側の鋏足が肥大する現象が本種では見うけられず、オキナワオオサワガニなどと比べると、大型個体でもいくらか貧相な印象です。
このミナミサワガニ科に属するサワガニは沖縄県ではこのオキナワミナミサワガニ(沖縄島固有種)のほかトカシキミナミサワガニ(渡嘉敷島固有種)、クメジマミナミサワガニ(久米島固有種)が生息しているようですが、(カクレサワガニという種もいますが、情報不足のため、この種の分類はまだよく判りません)どれも似通った色、形をしているので、3種を同時に並べられたら、その判別は容易ではないでしょう。
僕がこのオキナワミナミサワガニに初めて遭遇したのは二十歳の秋で、人生初の沖縄旅行ででした。発見当時はあまりにもサワガニ離れした容姿から海から川を遡ってきたイワガニの仲間かとおもっていたのですが、その晩、知人と夜の林道ドライブをしている際に仔ガニを腹部に抱いた雌個体を目撃し、そのとき初めてサワガニの仲間だと判りました。手持ちの甲殻類図鑑に記載がない種だったので、滞在中は何サワガニなのかは判らず、結局正確な同定をできたのは、神奈川県の実家に戻って、ネットで調べてからの事でした。今となってはネットや一般の方向けの書籍でたびたび紹介されていますが、つい7年前までは専門の書籍や図鑑にも一切載っていない、まさに知る人ぞ知る超マイナー種だったのです。
※サワガニ:一生を淡水で生活するカニの仲間。雌はイクラをひとまわり小さくしたような大粒の卵をお腹に抱え、それが仔ガニに成長するまで保護する。本州からは1種しか確認されていないが、南西諸島には各島々に多様な種が生息する。
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